長い歴史の中で静岡県民に愛され続けている「野櫻のわさび漬け」
今から約160年前の、安政五年。祖先である、初代野櫻長蔵が地元の農産物(お茶・みかん・わさび)とわさび漬けを販売したのが始まりです。
熟成した酒粕のみを使用し、素材の味を活かした製法で作られたわさび漬けは、当時、市場を出回るものとは根本的に異なっていたことから、「辛くて美味い野櫻のわさび漬け」としてブランディングされ、食卓を彩るソウルフードとして愛されてまいりました。
長い歴史の中で、過酷な戦争を経験したり、後継者問題などで苦しい状況がありました。
しかしどんなときも一族で団結し、とにかく、
「わさび本来の味を活かした昔ながらのわさび漬を全国に普及したい」
という強い想いを持って危機を乗り越え、駅ビルでの販売や、全国有名百貨店での催事販売に尽力いたしました。
しかし、そんな私たちの努力を持ってしても、昨今の原料の暴騰・景気低迷には全く敵いませんでした。
従来の製法や価格帯を変えない限り、経営を続けることが困難になってしまったのです。その結果、2019年に私たちは休業を余儀なくされました。
野櫻のわさび漬けの特徴は、厳選された酒粕にあります。飲みやすい嗜好酒として好まれる、大吟醸や吟醸酒の酒粕は水分量が多いため、わさびのピリッとした辛味を上手く引き出すことができません。
うっすらピンク色をした熟成された酒粕を使用し、その年の気候により風味や味が変化するわさびの状態に合わせて、長年培ってきた熟練の技を駆使して、極上のわさび漬けを提供することにこだわり続けてきました。
この「こだわり」を捨て、先代から受け継いできた伝統のわさび漬けを継続させるという選択肢は、ありませんでした。
しかし、そんな私たちの熱い想いは、地元のお客様にしっかりと届いていたのです。
「無いとみんな困るもんで、まだまだやらにゃんとなあ!」
長きにわたって愛してくださったお客様の温かい励ましの声が原動力になり、2020年3月、創業時の隣町にあたる宮ケ崎町に、規模を縮小し新たな工房を設け、再始動を図ることになりました。
そして、コロナウイルスの蔓延により危ぶまれましたが、努力の甲斐もあり2020年5月にリニューアルオープンさせていただく運びとなりました。
食卓を彩る食べ物が世の中に五万とある中で、ご飯やお酒の友にわさび漬けを選んでいただき、そしてそれが「野櫻のわさび漬け」である以上、私たちはその方に心から満足していただく責任があると思っております。
また、静岡が全国に誇れるものの一つとして、一人でも多くの皆様に「野櫻のわさび漬け」をご賞味いただくことが私どもの目標です。
素材の変化、そして時代の変化にもしっかりと勘を働かせ、最高のものをお届けできるようにこれからも精進して参ります。